経営者の経営相談Q&A

Q 年度計画の大詰めです。今年は、消費税、円の乱高下の影響で、下期の営業環境が読めません。不確定要素の数字を年度計画ではどう表現すればよいですか。

A もしかすると、関連会社の社長さんですか。厄介な問題ですね。もし、本社の社長・管理部門とざっくばらんなコミュニケーションが出来ている関係でしたら、予想数字の上限、下限を注記できますが、ほとんどの場合、本社側では達成可能な責任数字を求めてきます。
「積み上げ分+新規開拓分」×リスク率が予想数字となるのですが、営業環境はめまぐるしく変わるのが現実です。特に新規開拓分の成功率は、年度によって大幅に違ってきます。私の経験でも開拓目標数字と実績では、年度により15%~150%前後に変化した経験があります。ですから私の場合は開拓目標数値の成功率(達成率)を20%~30%に抑えて、年度計画に挑戦してゆきました。社内でも、年度計画未達より、計画達成の方が弾みもつきます。ただ、対前年業績を意識した年度計画を考え続けないと、目標数値がゆる褌になりますから、気を付けてください。(平成26年2月9日更新)

Qここ3年ほど、業績低迷が続き、出口が見えません。社員も自信を失っている感じです。現状打破の施策を教えてください。

A 経営全般が行き詰まることはよくあることです。落ち込まずに努力を続けていると、いつの間にか回復する事がありますが、業界の中で置いてきぼりにされると焦ってしまいます。
こんな時の施策には、気分を一新する組織改正、人事の一新など、オーソドックスな手法の他に、もう一つ有効な施策があります。
社員の中にヒーローを生み出す仕掛けです。一人でも、一つのチームでも良いですから他社に打ち勝つ施策を考え抜き、集中してみることです。成功者に拍手を贈るうちに、企業内に新しい活力が生み出せることがあります。
第二次世界大戦の独ソ戦で、スターリングラード陥落の寸前にロシアを救ったのは、一人の狙撃兵の活躍です。企業経営でもこの考えは有効な時があります。(2013.8.5更新)

Q部長、役員クラスの再雇用の処遇に困り抜いています。何かいいアイディアはありますか。

A 年金支給開始の変更で、急にこの問題がクローズアップしています。真剣な取り組みが必要です。
この課題は、一般的には難易度の高い経営課題です。ただ、単純に考えると単純な解決策が見つかるものです。
これまでのことを引きずらず、有能なベテラン社員を新規採用するような気分で、その処遇を考えてみてはどうでしょう。もう一度、一人一人のコンピテンシーを見直し、組織の長ではなく、個人、または1~2名の部下を与えて、得意分野の仕事に専念させることが、お互いにハッピーです。日常の業務では取り組めなかった積み残しの課題、特定顧客の増収対策など、急を要している特命課題の取り組みが有効かと思います。
大事なのは、それらの方の人事管理は、社長またはナンバー2の方が担当するといいでしょう。出勤日を週4日や、3日に減らしても、目標をはっきりさせて励んでもらうことが大切です。(2013.8.5更新)

Q新入社員の躾に困っています。時間が守れない、上司とのコミュニケーションがとれない、連係プレーが出来ない、言われたことしかやらないなど、社会人のマナーの悪さに戸惑っています。

A 一般傾向ですね。大学でも強く感じました。若い世代に、そういうタイプの方が多いのは事実です。この対策は焦らず、同世代間の交流、2~3年先輩の交流とか、若者の世代で議論し学ぶ研修の機会を与えて、自分たちの力で自立させるのが近道です。
できれば入社3年目までの育成コースを考えてはいかがでしょう。このプログラムが定着すると、離職率も下がると思います。
その間、年に一度ぐらい、厳しい研修コースもミックスしていきますと、いい刺激になります。
また、新入社員を社員懇親会などの幹事役にして会社の仲間に巻き込んでゆくと、若手が大きく成長した経験があります。(2013.6.1更新)

Q若者に夢とか野心を持たせるのにはどうしたらよいでしょうか。

A 誰もが苦しんでいる難しい課題です。でも、若者には時代のエネルギーがあります。これを見逃さないことが大切です。
若者は年配者に仕えるのが下手ですが、同世代で仕事を進める知恵は想像以上あるものです。スポーツ感覚の明るい仕事の進め方に工夫し、身近ところでヒーローを生み出す経営手法を工夫してみてください。
具体的には若者なりの努力を見逃さず、成果に結びつくたびに拍手を贈り、一人一人に自信を植え付ける社風にすることが大切です。また、その成功事例を発表できる場を大切にし、若者全体が会社のヒーローになってゆくようなムード作りが大切です。
何時の時代もそうですが、新しい市場の主役は若者です。若者の中から新市場を見つけ出して行く経営の原点を見失わないことが大切です。(2013.6.1更新)

Q 営業マンを育てるポイントは何ですか。

A トップが営業マンを思いやるマインドが第一です。今年、本屋大賞で話題の「海賊とよばれた男」が参考になるかと思います。経営者としての器の違いはありますが、自分なりの信念のもと、人間的に思いやる精神が基本になります。
精神論を離れた実務論としては、一般的に二つの道があります。
一つは根拠のある目標数値をたてて、日々、組織的なチェックをしながら問題点を見つけ出し、修正し、営業マンを励ましながら「営業力の質」を高めて行く手法です。欠点を探し出すのではなく、営業マンの努力を見逃さず、長所を引き出し、失敗を明日の糧にしてゆくのがポイントです。この場合、緻密な営業計画に沿ってコツコツと顧客とのコミュニケーションを積み重ねる販売手法が功を奏します。
もう一つは、これまで経験した事のない新しい手法での営業力アップする手法です。具体的事例で話しましょう。大がかりな試乗販売のようなイベントを考えた自動車の販売をイメージしてください。
この場合、目標数値は仮説です。数字を考える前に、説得力のある販売手法を考える創発力とマーケティングの質を高めることが大切です。
どちらも現実を直視し、使命感を持たせ、達成感の美酒を飲む快感を経験させてゆくことが大切です。(2013.5.1更新)

Q 営業マンの落伍者を出さない秘訣はありますか。

A 落伍者を出さないことは難しいですけど、落伍者が出にくい手法はあります。私の場合は、出来る限り数字を追及せずに、小さな成功、新規の市場開拓に拍手を送る社風づくりに努力しました。
次に気を使ったのは、営業マンの心のリズムです。年度のスタート1・2か月目、折り返し点、期末の2か月前辺りの営業マンの心境に対する思いやりです。スタートにうまく乗れない時の営業マンの苦しさと不安、「もう折り返し点か」とか焦るケース、「まだ折り返し点か」と辛さが続くケース、予算未達で期末を迎える不安な気持をなるべく理解してあげようと思いました。そして、自信をなくしそうになった時の心のケアです。営業マン一人一人が、「社長は必ず自分を見守ってくれている」という信頼に結びつく日々の努力が必要です。(2013.5.1更新)

Q 営業マンの落伍者を出さない、人事評価システムはありますか。

A あります。それは必ずリベンジできるシステムです。運に恵まれず業績不振が続き落伍しても、努力次第で、必ず復活できる分かり易い評価システムが有効です。また、管理者に昇進させるには、「部下を育成出来るかどうか」にポイントを絞った評価システムが大切です。
営業マンの人事評価は業績と連動していなければなりません。ただし、個人業績と、チーム業績は微妙に連動しています。その辺も、きっちり見極めないと社内がギスギスしてしまう事があります。
また、担当のお得意様が不況のために営業成績が伸びない時に、どう評価するかは深く考えなければなりません。これら諸々を考えた上で、単純明快なポイント制の評価システムを考えることが大切です。(2013.5.1更新)

*ご希望の方には3時間ほどの経営相談をして頂ければ、参考になる評価モデルによるご説明をいたします。

Q 部品メーカーです。円安で業績が順調になり、社員が40名を越える予定です。そろそろ総務・経理担当の責任者一人を銀行から派遣してもらいたいのですが、注意することはありますか。

A 社長の技術力と営業力で成長されていることと思います。経理・総務業務では決算の他に税務申告の実務が出来る人、資金計画に強い人が大切です。この実務が確りしている人でなければなりませんが、大事なのは、社員に親しみやすい人を推薦してもらうのが良いでしょう。
社員が30名を越えてくると、社長と社員の距離間が出はじめます。また熱心な社員でも社長と親しくできないタイプの社員も出てきます。また、銀行から来られる外部の方には、社長が採用されてきた社員とはコミュニケーションがとりづらいのが一般的です。その意味でも、社員からざっくばらんに相談しやすいタイプの方をお願いしてみるのが良いと思います。
また、派遣されて来た方が、こちらの思惑通りの人でなかった場合には、総務担当に、社員から相談しやすい方を配置するのもよいかと思います。
また、銀行の方は、議事録、社内規定などの書類を、大手並みにきっちりしすぎるタイプの方も多いので、この辺はうまく指導してください。 (2013.4.1更新)

Q そろそろ、社長の後継者を考えなければなりません。チェックポイントはありますか?

A 社長の座は総理の座と同じで、就任してみないと分からないところがあり、軽々なことは言えません。ご自身が育てた会社でしたら、4年ぐらいは新社長の評価をチェック、牽制出来る体制にしておくことが大切かと思います。
それができない時の場合は、社長の直観で選ぶのが正しいことが多いと思います。業績主義を貫いて、現場の評判が良い人を選んではいかがでしょう。チェックポイントとしては、酒癖が悪い人、社員を見下す人、業者との癒着の噂のある人、ダジャレを連発する人は避けるべきです。社員の心を傷つけ、社員の意欲を摘み取ってしまいます。また、管理型、調整型の人を選ぶと、チャレンジ精神が萎えがちになります。社長を補佐する役割で、チャレンジ精神旺盛な人と組み合わせるのが良いと思います。(2013.4.1更新)

Q セミナー案の中に、<悪玉>問題社員という表現がありました。どういう意味ですか。

A 私流の理解ですけど、金銭問題を起こす社員、愉快犯的な悪癖を持つ社員など、法的にも懲戒解雇が認められている社員です。特に、情報化社会では愉快犯的社員に注意する必要があります。また、「会社では、何もしなければクビにはならないよ」と若い社員に責任回避、怠惰を吹き込む社員も気にかけることが大切です。(2013.4.1更新)

Q 新入社員の懇談会が苦手です。コミュニケーションを図る良い方法はありますか

A 色々な手法があります。会社の規模、新入社員の数によっても違いますが、新入社員が10人以下ぐらいの会社でしたら、家族的な雰囲気の会話が大切です。共通する話題、例えば「子供のころ住んでいたところ、その頃の遊び」を紹介してもらい相互理解を深めながら、社長自身の思い出話も紹介して、人間性を理解し合うことが大切かと思います。入社の第一印象などというと、決まりきった話題になりがちですので注意してください。むしろ、「入社して戸惑ったこと」などをテーマにすると話が弾み、社長の立場で若い人に戸惑っていること、若い人にお願いしたいことを話しても伝わりやすいと思います。

 

*一度、簡単な経営相談を頂きますと、社長、または管理者が自力で出来る有益な社内コミュニケーション手法をお教えできます。2~3時間ほどで大丈夫です。(2013.4.1更新)

Q.経営改革には努力もし、勉強もしていますが、業績向上に結びつきません。どうしたらいいでしょうか。

私も社長就任1、2年目は同じ思いでした。その思いが吹っ切れたのは、一番地味に努力している部署の数字が動き出した時です。
社長業はあれこれ改善を考え、問題解決に翻弄されて迷う日々が続くものですが、ある日、多くを望まず、自分に今できる行動が見えた出した時から、数字が動き出します。
これまで色々な社長さんの相談を受けましたが、他者の意見を頼りにしているうちは、その施策は借り物です。学んだものを、自分の物として問題を整理し、行動したとき、数字は動き出すのです。社長の考えに自信と信念が見えた時から、行動派の社員が、まず、稼ぎ出すのです。

Q.私の思いと考えは、事あるごとに社員に言い聞かせているのですが、なかなか伝わりません。何か良いアイディアはありますか。

誰でも実感することです。私の社長就任の時の話です。私の話を真剣に聞いる社員がいました。そこで、彼に感想を聞いてみたのです。するとその社員は、「社長の挨拶は今までの方と違ってすごく真剣な話でした。大事なことが三つあると言っていましたが、ええっと…」という事でした。
話の内容というのは、現実にはまず伝わらないと考えた方がよいでしょう。その内容を、確認できる文字にするとか、社員に直接関係する話題の時に、その考えを繰り返してゆくと段々浸透してゆきます。
まずは、社員に伝えたいことを絞りに絞って、社員の立場を考えながら、繰り返し方便してゆくことが大切です。
社長や上司からの一方通行だけでなく、社員間で社長の考えを確認させる社内コミュニケーション教育を採用すると大変有効です。

Q.30人規模の会社の社長です。社員ひとり一人にも気を配っています。社員も頑張ってくれます。しかし、業績が上がりません。どうすればいいですか。

会社の業績には多くの要因があります。社長さんの下でまとまっていても、ほぼ同規模、同業種のライバルに一歩抜きん出ていないと、効率の悪い収益構造になってしまいます。いわゆる小さくとも時代にマッチしたオンリーワンの会社づくりが出来ているかどうかかの点検が必要です。古い経営手法かもしれませんが、泥臭く、集中特化することを考え続けていると、道が開けるきっかけに出合うかと思います。

Q. 業績不振が続いています。社員の人心を一新したいのですが、人事異動のタイミングをどう考えたらよいでしょうか。

これは微妙です。定期異動ではなくインパクトのあるものを考えているのですね。異例の人事異動の場合は、事前に人事刷新の必要性を浸透させるか、異動時に、異動の目的を社員に理解してもらう大きな努力が必要です。経営はスポーツの団体戦に似ています。事業が考え通りに展開しない時の心構えは、ハーフタイム後の戦略の立て直しに似ています。失敗を引きずらない工夫をしてください。2点取られたら3点取り返す戦略転換に切り替えることを考えてください。

Q. 社員の潜在能力を見抜くコツはありますか?

この課題には私も悩み、苦労しました。ここでは、仕事上の得意分野を見抜く実務について、私の経験を紹介させていただきます。


それは社員が仕事に取り組む能力のプロセスを丁寧に観察してみることです。一般に社長の得意分野については、日ごろの言動で社員の得意分野を見抜く事が出来ますが、社長の不得意分野で活躍する社員の能力評価、潜在能力を見抜くことには努力が必要です。
それは仕事で成果を出して来たプロセス、失敗してきたプロセスを丁寧に聞き出し、社員の得意分野を考え続ける事です。仕事の内容がよくないのに、営業成績が良い社員の行動をみてみますと、クライアントさんから「お前、バカだなあ」と言われながら可愛がられる性格だったりするのです。


社員のヒヤリングは、きっちり聞く機会と、雑談の中でさぐる手法があります。雑談の中でそれとなく本音を聞き出すことも大切です。

Q. 社員からトンチンカンな質問があった時、どう対応するのですか。

社長の能力と社員の能力は一般的に大きな開きがあります。ですから、聞き流して良いトンチンカンな質問も多いと思います。しかし、社長と思考回路の違う発想から出た考えや、質問も交じっていて、これを正しく理解することが大切です。
オヤッと思った質問や提案に出合った時は、その場で上手に対応できないと思いますが、間を置いてから、もう一度そのプロセスを考え直してみることが大切です。質問のあった社員と仲の良い社員にその背景を聞いてみるのも良いかもしれません。

Q. 銀行から社員80名ほどの製造業の会社に転出し、事業全般の社長補佐の仕事を始めました。どんな目配りをしたらよいでしょう。

銀行から転出されたのでは、視野も広く経理業務は得意分野でしょう。その分、事業家的思考回路が弱い人が多いのが現実です。まず、泥臭い現場から気軽に話しかけられる雰囲気づくりに気を配ってください。と同時に、製造現場の把握が大事です。第三者の立場から、技術力の評価をすると同時に、しがかり品現場、在庫現場の把握が大切です。
しがかり品を製造している担当者は、先行きの市場を考えて仕事に取り組んでいるのか、自分の仕事だからと作ることだけに専心しているのか、その辺の見極めが大切です。
また、在庫の点検では、死に商品かどうかの判断が大切です。除却すべき商品は早めにけじめをつける社風にすることが、健全経営の第一歩です。

Q. 銀行から輸入食品を扱う小さな商事会社に転出しました。創業間もない会社で会社員としての躾けが出来ていないうえ、社内規定などもありません。どうすればよいですか。

小規模で創業間もない会社は、当面の仕事に追われ、社内ルールがルーズなのが一般的です。また、ややルーズな方が、仕事がやり易い事業環境もあります。焦らず、冷静に対処してください。
先ずは、粗削りな社内ルールを作り、問題ごとに判例を作るような気持ちで、対応してください。社内で初めて起きた問題は、寛容な心で対処し、新しいルールを社内に徹底すると同時に社内規定とし、その後はしっかり処罰するというやり方が馴染むと思います。

Q. 春闘で毎年苦労しています。良い知恵を教えてください

質問が漠然としていますので、一般論でお答えします。労使交渉は、組合対応の会社と、組合、従業員過半数代表者の二本立ての会社、従業員懇談会の会社と様々です。
ただ、大事な基本が二つあります。一つは総論で議論しないことです。従業員数が100名前後のまでの会社ですと、総論とか建前で話を進めると、個人的に不利益になる人が出ることがあります。経営者は常に高い立場で公正になるよう深く丁寧に考えることが大切で、ひとり一人がどうなるかという資料を分かり易く説明することが大切です。
二つ目が、声の大きい従業員に振り回されず、ぶれないことです。交渉を進めると、従業員の立場からの考えに学ぶことも多くあります。ただ、Aの提案にうなずいてしまいますと、もっと素晴らしいBの提案を受け入れることが難しくなります。相手の考えに耳を傾けますが、声を出さない社員の気持ちも汲んだ最終案を心に決める前は、決して軽々な発言をしないことが大切です。会社側のブレが大きな問題になることがありますから気を付けてください。